自分が自分になるために ~ カール・ロジャーズ博士の

来談者中心療法によるカウンセリング


アメリカ心理学会による「20世紀にもっとも影響の大きかった心理セラピー家」を選ぶ調査で 第一位に選ばれたカール・ロジャーズはカウンセリングの神様とも称されています。

 

そのロジャーズが創始したのが、『来談者中心療法・クライアント中心療法』 (client-centered therapy)です。

 

ロジャーズのカウンセリング理論は 「個人は自ら成長、健康、適応への衝動を持っている」という生物学的仮説を基本理念としています。

 

この、自分を自然に回復して立ち直らせ、新たな成長を成し遂げさせる本来的な人間の性質を、ロジャーズは“実現傾向(actualizing tendency)”と呼び、心理的な問題症状や不適応を生み出す原因を自分で根本的に解決する力を全ての人が持っていると想定しました。

 

クライアントの持つ自然な回復力や自己実現傾向といった潜在的な人間(生物全般)の可能性を深く信頼するロジャーズの心理学理論は、心理学の第三勢力と呼ばれる『人間性心理学(humanistic psychology)』に分類されます。


来談者中心療法によって提示される心理カウンセラーの基本的態度として注目すべきところは、カウンセリングの場を一方的な助言忠告や指導の場にせずに、出来る限り対等な立場で、お互いの人格を尊重して対話を交わす大切さを説いていることです。

 

「話したい事柄を、自由に話すことのできる安心した環境」と「相手から批判されることなく、話す内容を受け入れてもらえる信頼できる人間関係」を整えて、共感的な温かい雰囲気の中で、心理的な問題や苦悩について率直に話し合うことによる成長促進や問題解決の効果を得られることが、来談者中心療法の意図するところだと言えるでしょう。


成長・回復を促す3つの条件


クライアントの成長・回復を促進する基本的態度として最も重要な三条件は 「自己一致」「無条件の積極的関心」「共感的理解」といったカウンセラーの姿勢です。

 

(1)自己一致 (congruence)

  • カウンセラーの気持ちに嘘がなく、純粋であること。
  • カウンセラーが専門家としての仮面をかぶらないこと。
  • カウンセラーが自分の気持ちや感情に常に気づいていること。

 

(2)無条件の積極的関心(unconditional positive regard)

クライアントが表現している肯定的なものも否定的なものも何も判断せず 大切に受けとめること。

それは決して見せかせであってはならないこと。

ただし、クライアントを無条件に好きになることとは違い、 一線を画す姿勢は必要です。

 

(3)共感的理解(empathetic understanding)

クライアントの気持ちに感情移入することで、あたかも自分が感じている気持ちであるかのごとく感じとり、しかもその「あたかも」を失わないこと。

そして、それらの感情をクライアントに伝えること。

同時にその感情に飲み込まれないことも必要である。

 

来談者中心療法は、個別の心理的問題や苦悩に対応する専門的技法という意味合いが薄れ、今では、心理カウンセラーが体得すべき基本的な態度・人間観・会話法といった形で認識されることの多い技法です。

 

しかしその汎用性は、心理学界に限らず教育や福祉分野などでも取り入れられ、世界中に影響を与え続けています。


Alma Materでは全てのセッションの基盤としてロジャーズ博士の語る哲学を大切にしています。


お薦め書籍